あなたは生ける神の子キリスト

「イエスは彼らに言われた。『あなたがたは、わたしをだれだと言いますか。』シモン・ペテロが答えた。『あなたは生ける神の子キリストです。』すると、イエスは彼に答えられた。『バルヨナ・シモン、あなたは幸いです。このことをあなたに明らかにしたのは血肉ではなく、天におられるわたしの父です。そこで、わたしもあなたに言います。あなたはペテロです。わたしはこの岩の上に、わたしの教会を建てます。よみの門もそれに打ち勝つことはできません。』」(マタイ16:15-18)
 マタイ一六章には三種類の人たちが出てきます。第一は当時のユダヤ社会の指導者たち。彼らは主イエスに、「あなたが神の子なら、しるしを見せなさい」とつめよりました。第二は群衆たち。主の奇蹟を見てバプテスマのヨハネが生き返ったとか、昔の預言者の再来だ、などと言っていました。そこで主は、「あなたがたはわたしをだれだと言いますか?」と弟子たちにおたずねになった、それが文頭の聖句です。そのときペテロは一同を代表して「あなたは生ける神の子キリストです」と告白しました。すると主は、「わたしはこの岩の上に、わたしの教会を建てます」と宣言されたのです。このように、教会はナザレのイエスを生ける神の子キリストと信じる人たちから成り、私たちもこの信仰告白によって教会に加えられました。ただし忘れてならないのは、生涯を通じてこの告白に生きる必要がある、という点です。
 ところでペテロはこのあと大失敗します。主が「わたしはエルサレムで苦しみを受け、殺され、三日目によみがえる」と言われると、びっくりしたペテロは主をわきにお連れし、「そんなことが起きるはずはありません」といさめました。すると主は、「下がれ、サタン。あなたは、わたしをつまずかせるものだ」ときびしく叱りました。
 たしかにペテロは師への敬愛とまごころから、善意に満ちていさめました。しかし主は「下がれ、サタン」とおおせられたのです。ここに、「なぜキリスト者は御霊による聖化を体験しなければならないか?」という問いに対する答えを見ます。かつてJ・ウェスレーは「地獄への道は人の善意からできている」と言ったそうです。このときペテロは、「あなたは生ける神の子キリストです」と最高の告白をしました。だがサタンはその直後、神の子に十字架への道を歩ませまいと、ペテロの善意を利用して誘惑したのでしょう。つまりキリスト者にとり、肉性が死んでいないというのは、神のお心を理解せず、善意に見えながらかえってサタンに利用される危険性があることを意味します。
 ペテロたちは、この後も失敗を重ねました。ゲッセマネでは主を捨てて逃げ、大祭司の庭では三度も知らないと言い、ゴルゴタでも主を見捨てました。ですが、主はすべてをご存じのうえで「わたしはこの岩の上に、わたしの教会を建てます」と宣言されたのです。かくて十字架のあがないが成就し、主の復活、昇天、ペンテコステとなり、彼らは聖霊の火を受けて変えられ、地上に教会が生まれ、働きは世界に広がって行きました。このように使徒たちがたどった道程は、「教会が建設されていくためには、ひとりひとりが聖霊により、真の変貌をとげる必要がある」という真理を物語っています。
今日のわが国は、表面的には繁栄していますが、私には退廃の一途をたどっているように見えてなりません。かつてのソドム、ゴモラは天から降る火と硫黄で滅ぼされましたが、日本は退廃という火で内部から焼けくずれるのではないでしょうか。もしこれを食い止めるものがあるとすれば、それは「あなたは生ける神の子キリストです」との信仰に本気で生きるキリスト者たちです。十人の義人がいたら、ソドムとゴモラは滅ぼされずにすんだはずでした(創世記18:32)。そのことを心にきざみ、「召されたその召しにふさわしく歩もう」ではありませんか。

西播磨めぐみ教会 笠見滋



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